*




「まぁ、別れてよかったんじゃない。なんか窮屈そうだったし、」
「ドンへ」

 咎めるように、シウォンがドンへの言葉を遮る。
 どうして今まで何も気づかずに鈍感でいられたのか、今となっては不思議だ。たったこれだけのやりとりで、ユノは二人がチャンミンから話を聞いていることを察してしまった。


 ドンへとシウォンは、ユノの一つ下でサークルに入ってきた後輩だった。
 学年は違うものの気が合って、三人で話していることが多かった。チャンミンが会ったことのない、会話に名前が出てくる二人にやきもちを妬いて揉めたことも遠い昔にあったりしたが、次の年に入学してきたチャンミンもすぐ意気投合し、輪の中に加わることになった。
 三年の冬でユノがサークルを引退し、就職活動を始めてからはチャンミンとドンへ、シウォンの三人で短期バイトへ行ったり飲みに行ったりして、楽しそうにしている姿を微笑ましく思っていた。


 ドンへからランチの誘いが来たときには、うすうす話したい内容はわかっていたが、共有の友人に話せば、なにか変わるのかもしれないと淡い期待があった。
 ユノは二人とは別の会社なのだが、ユノの会社が入っているビルとドンへたちの会社はすぐ近くの位置なのだ。二人が入社したての残業がないような頃は、帰りに飲んで帰ったりもしたが、ここ最近はそんなこともなくなっていた。


 でもきっと、その会えない期間にもチャンミンと二人は会っていたんだろう。ただの推測で、違うかもしれない。二人と飲むなら、ユノを誘ってもいいはずなのに、そんな飲み会に誘われた記憶もない。


「チャンミンは……別にもう好きな人がいるのか?」


 ユノの質問にドンへとシウォンが顔を見合わせる。お互いに視線で会話して、苦々しい顔をしてシウォンが箸を置く。


「わからないけど、多分そういうのではないと思います。
…それと…その、ユノヒョン。言いにくいのですが…誰かのせいで別れることになったんじゃなくて、二人の関係でうまくいかないことがあった、と考えた方がいいと思います。」


 オブラートに包んだシウォンの言いたいことが、つまりはチャンミンの彼らに伝えていた言葉なんだろう。
 心移りしたのではなく、ユノとの関係がもういやになったんだと。


 ドンへの様子からすると、過剰なほどの連絡を取りたがるユノが、第三者から見てもおかしいようだ。
 たしかに、社会人にもなって大学生の恋人を束縛している構図はだいぶ痛い。
 チャンミンと付き合って癖になった携帯の受信チェックは二、三十分に一度、社会人になった今でも見てしまう。
それは営業職だから、個人用携帯もそんなにチェックできるわけで、一般職だったら不可能だったと思う。別れ話のときにも、主張もせず終わってしまったが、そもそもチャンミンが始めたことだから、という理由は意味がない気がした。

 たしかにチャンミンが最初に約束を作った。だけど、思い返せばその約束に対して、チャンミンはどうだったろうか。
 はっきりと口にされてしまった、ユノの報告行為を求めていない、勝手にしたことだという言葉。約束だから、当たり前にずっとそうするものだと疑いもせずに、なぜ思ったんだ。

 きっと、ユノが変わらなければいけなかったのに。
変わっていく状況に、きちんと考えを変えていかなければいけなかったのに、頑固になってしまっていた。


「チャンミンは、二人のどっちかの家にいるの?」
「…会いたいって意味なら、」
「いや……引越しの準備を進めるからチャンミンに荷物、整理するように伝えておいてくれるか」


 平日の日中の俺がいない時間とかでもいいから、そういうユノに、二人はほっとしたようだった。
あの別れ話の後、大した荷物も持たずに出ていったチャンミンの行先は、おそらくユノも知ってる誰かの家だろうとは思っていた。日中にチャンミンが気にいってる服や鞄、靴がなくなってるのも気付いていた。

 もしかしたら、なんて思う余地もないほど、冷静に進められていく別離に、どうしてまだ期待なんて持てていたのだろうか。

 きっとその期待が、二人には透けて見えたのだろう。未練のあるユノが、変なことを言うのではないかと、二人は思ったはずだ。チャンミンのことを話すユノの口調ににじみ出た期待を、見せてしまったことが今更ながらに恥ずかしい。
 連絡だってブロックされて、こんな自分で連絡すればいいことを、友人つてに頼まなければいけない関係なのに。


「ユノヒョン、大丈夫?」
「…大丈夫だよ」
「落ち着いたら、また飲みに行きましょう」
「そうだな……いろいろ、二人も悪かったな、巻き込んで」
「気にしないで、長い付き合いじゃん」
「ありがとう」


 心に吹き込む虚しさ。
 思えば、ユノは色んな人と分け隔てなく仲良くしていたが、こういうとき特別に仲良くしていた人間が浮かばない。本音で、泣いて話せるような関係の人間がいなかった。
 よく行動していた仲間内でユノが一人、年上だということもあったあもしれない。いつもみんなを、温かい目で見守っていたユノは、いまさら誰かに泣きつくことなんて考えられない。それにきっと、ユノよりチャンミンとの方が、つながりが深くなっているんだと、これまで気にしていなかったことが、今その違いを実感していた。


 誰もユノが悪いとは言っていない。
だけど、二人の関係はいびつだと、誰もが思っている。


 どこで、間違えってしまったのかな。








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皆さま、素直にもやってくれて作者として嬉しいです…!!(おい


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コメント
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な***様
な***様の医者を呼んでくれシリーズ(!?)めっちゃ好きですwwww
これを言わせたいがための…みたいな動機でもやっと話増えていく…かも…?(え

ユノさん、たぶんチャンミンに時間さきすぎて自分の友達との時間犠牲にしたから…友達関係が希薄になった疑惑があります……
y******様
いい感じに皆さまのもやもやを回収(?)できて、しめしめ…と思っております(´^J^`)(悪い顔)

たしかに共通の友達に言うのって、二人の問題が二人の問題じゃなくなる感じ、ありますね!!?
新しい恋!意外にもチャンミンと関係修復より新しい恋しよう!派が多く、ミンホじゃなくても許せる方の多さにびっくりです!!でも、この作品でそうできない理由が次で書きます……!もやって下さい…!(なんてこと言うんだ)
茶********様
今まで盲目的にチャンミンとの関係、二人のことだけしか見ていなかったので、青天の霹靂のような別れ話に、一体俺は何を見てたんだ…?と自分を信じられなくなってますゆのよん。

チャンミンが再びアタックするくらい…もういい男ですのでご安心を!!( *´艸`)ふふふ
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酷暑のはずなのに寒気が
ユノー大丈夫?一人で抱えて(うわぁん)
なんだかんだ言ってもチャンミンの事を優先にしてるもんね。鈴木様のモヤモヤシリーズなのに
暑さを感じるどころかこの先に恐怖する私。
どんな稲川淳二の話よりもブルっています。
一度距離をおいて、ユノ立て直していこうぜ!
新しい攻撃パターンと守備試そうよ!
ゲームならドンマイでいけちゃうんですが。
危険ワードが今回出そうもないこのシリーズオープンでコメントしますね♡
このシリーズはどんなお中元よりも心に残る夏の贈り物の予感です。
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あ***様
日曜日もお仕事お疲れさまです!!

もやもやがあらゆる副作用を起こしてますね!!?Σ(゜o゜)
ドンへさんはチャンミン側です…義警三兄弟だから…(関係ない)
これから更にもやらせてしまうかもしれない三話を18時に予約投稿してますので、お仕事終わりにどうぞ!!

お互いに暑さに負けずがんばりましょう!!!!(*´ω`)
まうりん様
ユノはあまり自分の恋愛相談をしなさそうなイメージです。チャンミンは男友達にはめっちゃ相談しそう(笑)

ホラー!!!いいですね、夏っぽい!!
ホラーでミンホな話を書きたくなってきました…これをお中元に皆さまに涼を届けたい…!!!(変な火がついた)
このお話しの次はホラーいってみたいと思います!心に残る夏の贈り物……アイディアありがとうございます!!!!!(?


攻撃と守備!!!!!!野球みがすごいですwwwwwww
ユノさんの受難はまだまだ続きます…一時間後に予約更新したので夏の恐怖に負けずぜひ見て応援してあげて下さい…(*´▽`*)

危険ワード……はて??なんかありましたか????(すっとぼけ
ち*様
しめしめ…順調にみなさまのもやもやを回収しております!!!(げす顔)

!?!???!(アッ!!チャミペンさんだった…!!)(すっかり忘れてた!!!)←
シムは後悔………するのでしょうかね?短編なのでさくっと終わらせようかと思っていて、あまりスカッと要素はないかもしれないです。ただただもや~~~~っと(よけいに暑くなる)終わる感じになるかもしれないです……

読み返していただいてるなんて、恐縮です……!わたしもたまに読み返して誤字潰しをせねば…(誤字職人)

ふっふっふ、ホミンペン様を少しでもミンホ沼に…ミンホの萌えポイントを広める運動(?)が実績を結んだようで、嬉しいです!!!脱・マイナーカップリング、ミンホ!!!
せ、せめてホミンと半々くらいの勢力にしたいです…!(ひそかな野望)

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