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「今日はありがとうございました」


 席を立って頭を下げると、「こちらこそ。記事楽しみにしています」と、最後まで変わらない愛想のよさでユノ・ユンホが答えた。その横で、ありがとうございました。お疲れさまです、と礼儀正しくチェガン・チャンミンも会釈する。



 キムは二人が最初に入室していたときより、緊張している自分に気付いた。
 一旦、中座した二人が戻ってくると、ユノが部屋に入るなり「ああ。なんかちょっと、乾燥してますね。」と自分の喉元に手を当てながらごく自然に部屋の窓を開けた。「今日ずっとスタジオに缶詰だったからな、外が恋しいです」と青空を見ながら席につくと、インタビューは始まった。





 最初はいくら立派な芸歴だろうとただの二十代の青年だとタカをくくっていた。

 本業である歌とダンスはうまいだろう。モデル級のスタイルに若い頃からデビューしこの業界に身をおいていた時間も長い分自分の魅せ方や、特殊で厳しい芸能界を生き残るすべにはたけているだろうが、兵役もまだで一般社会の経験もない二人を、キムはどうやら思っていた以上に偏見での目で見ていたようだ。
 ここまで長くアイドルをしているのだ、頭の回転がはやいことは予測済みだった。だけど、予想外だったのは、二人とも勉学的な意味でも賢く、教養があった。そして―――――なんだかんだ理屈をならべても、やっぱり女の部分がつい、反応してしまったのだ。


 ユノ・ユンホの印象は、リーダーとしてマイクを握り取材陣に堂々と答えるその姿。
 ひとつひとつ整った繊細な顔のパーツ。優雅でクールな目線。笑うとどことなく誘惑にほころぶ澄ました唇。
 仕事に対する話題のとき見せる真剣な表情は、周囲の者を圧倒するオーラが放たれていて怖いくらいに近寄りがたい。なのに一度仕事から離れた話をするときに見せる柔らかな表情や笑い声は、こちらもつられて頬をほころばせるような可愛さがある。絶妙なバランス。目を細めてやさしく微笑みかけるあの顔。あれは簡単に、女性を勘違いさせる。


 正反対なチェガン・チャンミンは「一日だけ君の飼っている猫になりたい」なんて歌っていた可愛らしい少年とは思えないような、硬質で礼儀正しい理知的な青年だった。
 他の編集部の人間が見てもどうも思わないだろうが、そのいっそよそよそしいとも思える態度は、節を欠いた状態で仕事をしている自分への意趣返しだとわかって、キムはなかなかどうして居た堪れなくなる。らしくもなく、弱気になってしまうそんなつらい状況を、ユノに助けてもらうこととなった。さすが長い付き合いだけあって、弟の扱いを心得ている兄が自然と会話や暖かなスキンシップで取りなしてくれたのだ。
 構えを解いたチャンミンは、部屋の空気もいれかわったせいもあり、朗らかな笑みを浮かべて会話できるようになると、その魅力はどんぴしゃにキムを突き刺した。
 キムのインタビューに真剣に答えながら、ふとした時に含ませるウイットに富んだ一言。ときどき、いたずらっぽく細めた視線が意識せずキムに向けられ、その甘く光る瞳に見つめられて何度か息が詰まりかける。
 ユノを通して、彼の男性としてのやさしさが見えた。軽食をつまむユノの、視線の先によく気付き会話もなく、ユノが求めていることがわかるように先回りしていた。
 きっと、彼女にも、こんな感じなのね。
そんな想像をしたとき、胸の中に不思議な甘い疼きが走る。


 二人が話すことは、ほとんどそのまま記事にできるような内容で、インタビューは予定よりも早く終わることとなってしまった。それを残念に思っているのはキムだけで、さわやかに出ていく二人を見送ったあと、キムは二人のファンになってしまったことを認めるしかないほど胸がざわめいている。
 会話をする時間が積みあがっていくのと比例するように、この二人の不思議な魅力の吸引力に餌食になってしまった。


 別れ際に距離が近くなったとき、ほのかに香るアルファのフェロモン。
清潔感のある柔らかな匂いがチャンミンから放たれているのに気づいて、キムはその胸に飛び込みたくなる衝動を抑えることにとても苦労した。あんなに惹かれる匂いって、『運命の番』ではないの?
 そんな夢見がちなことを思うが、対するチャンミンは冷静なもので。


 この気持ちはファン、という言葉で整理できるものじゃない気がしたが、それはたぶん考えない方が自分のためだろう。あまりにも、次元が違いすぎる。


 噂の東方神起との初めての仕事はキムにとって、敗北にも似た忘れらない初恋のような甘くほろ苦い感傷と、しばらくの間あの二人が自分へと向ける魅惑的な微笑みがフラッシュバックして、SNSで二人の状況を調べてしまうような、そんな後遺症を残して終わった。



(噂のカレら ~記者Aの場合 ~ 了)





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(最高のアルファたちだったわ……次はいつお目にかかれるのやら…)



次に何を書くか、まっしろ状態です……
何書こうかなぁ。ちょっと二~三日くらい考えてるかもです。(思いついたらアップしますね!)


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オメガバース(リアルベース) | コメント(8)
コメント
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な***様
昨日の敵は今日の友ですね(*∵*)!
おいしいお酒を飲めますね!キムさんゆくゆくは日本のライブも来る強火ペンになりそうですが……

そして勘違いだとバッサリ切りつつ、ユノの…と言ってるので、朝まで飲み会の最中に何度か意見の対立が起こりそうですね……(え
鈴木はハラハラドキドキワクワクしながら横にいますね!!

ここでオメガバース初体験だったのですね(°_°)!
ご都合主義120%の設定もりもりなのでよそ様のを読まれたら、オメガバースBLの醍醐味(オメガの苦悩とか)全部ないやんけ…と愕然されるかもしれませんが、こっこれはこれで楽しんで頂けてよかったです!!いつか同じ事務所の後輩とか、他事務所の人間視点とか、3視点(問題作?)でとか書けたらいいなぁと思います。初めてのエッ……いろいろ書けそうなのありますしね!
あ**様
初めまして。コメントありがとうございます( ˙ᵕ˙ )
オメガバースシリーズ、楽しんでいただけたようでよかったです!
このシリーズは長くゆる〜く続けていけたらと考えてます。付き合いたての練習時代から、今現在までの二人の微妙な関係性の変化とか、カップルあるある的な感じにできたらなと(具体的な案はこれからですが…←)
なのでこれからもお付き合いいただけたら嬉しいです(^^)
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ま***様
チャンミンのさりけないサポートって親しさのあらわれって感じで大変良いですよね。事務所のライブでも、後輩たちをサポートしてる姿も見ますけど、そのときは紳士然としてるっていうか優しい先輩って感じだけどユノヒョンにはあーもう手がかかるんだから!(俺以外に面倒みせんなよ)みたいな手馴れてちょっと雑になってる感じとかが垣間見得て、これはミンホですね……って理解して沼入りいますよね。わかります…( ՞ټ՞ )
番ってると、オメガのフェロモンは番にしかきかないけど、アルファは特にそういう制限ないので、この辺ネタにしておもしろい騒動が書けそうですね…(悪い顔)
ユノヒョンは誘惑フェロモン抑えてても…路上ファイト待った無しの魅力があるから…大変な二人です。

オメガバース、こちらで初体験だったのですね!
男性妊娠的な話は、イロモノになるんでしょうかね……そういうものを抵抗なく受け入れてもらえて、楽しんで頂けたなら一安心です!!シリーズ、細く長く続けますのでよろしくお願いします( ˙ᵕ˙ )
か*様
初めまして、コメントありがとうございます。
わわ!ジャンル問わずオメガバースを読んだ上でお褒めいただけて光栄です…!そしてこの世界のベテラン様ということもあり分析力も……。(も〜二人ともオメガの苦難とかリアルの同性と付き合う偏見・子供問題とかつらい話になる要素はすっとばして楽しく付き合っちゃおうよ〜〜大変なことは全部カットカット!みたいなこともバレてしまっているだろうか……(;´д`)←)
好みにあったようで嬉しいです!誘惑部分に反応していただけたことは意外で、そういう部分も楽しんでもらえてるのか!と…!
基本的にユノヒョンは苦労人だから幸せにしてあげたいし、チャンミンのわがままは叶えてあげたい…そんなミンホシッパーゆえにいつもあんな感じになってます。(ときどきユノヒョンが疲れきってますが、トータルして幸せなはず……)
基本的にハピエンが好きなので、読んだ後にミンホの風を感じさせているなら嬉しいです〜( ˙ᵕ˙ )わたしも日々精進してまいりますので、これからもよろしくお願いします(^^)

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