Get it ? 2
2018/06/14 Thu 22:26
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「チャンミン、もう起きろ、遅れるぞ」
抱き枕と間違えているのか、目覚めにボクサーパンツ一枚の男に抱き着かれながら起きることにも慣れてしまった。こんなになるまで飲むなと言ってもまったく改善されない。
時間通りに起きたユノは朝食の準備をすましてから、手のかかりすぎる後輩を起こしに仕切り扉一枚で区切っている寝室へ行った。
朝食といっても食パンを焼いて、目玉焼きを焼いただけの簡素なもの。それでも、ないよりはこの寝起きの悪い奴を起こすのには効果がある。何度起こしてもなかなか起きてこなかったのが、ご飯の匂いがすると一度か二度起こせば、起きてくるようになった。
チャンミンの寝起きはすこぶる悪い。
あまりに手がかかるのでよっぽど置いて先に出勤しようかと思ったし、実際置いて行こうとした事が一度ある。
もうあいつも二十歳超えた社会人なんだ。実家暮らしで親に甘えてるのかもしれないけど、俺は親じゃない。
そんな風に思いながら一人準備をすまし玄関で靴を履いたところで、寝起きに見たすやすや眠るチャンミンの寝顔が思い出すのと同時に一時間後には店長に叱られいるイメージが浮かぶと、なんだかかわいそうな気持ちがふっと湧いてきてしまう。
良心の呵責がとがめて、結局ユノは荷物を置いて起こしにいった日の経験から、自分の性格的に放っておくこともできないのでもう一緒に家を出ることにしようとユノは決めたのだった。
もともと家事や炊事は得意ではなく、時間もない。
だけど、朝ごはんを食べそびれると、日によっては晩ごはんまで食べれない日もあるので、なるべくここ一年は朝ごはんを作って取るように努力していた。それが、二人分になったところで特に負担ではないし、金銭面でも特に問題はない。
この春からまた異例の早さでトップスタイリストに昇進したユノは、スタイリストになった去年から固定給と歩合で給料をもらっており、ありがたいことに昼休憩がとれないほどの指名率で給料は同世代の企業に就職した男たちよりも多くもらっているだろう。
この夏の技術試験を受ける予定のチャンミンは、それに受かればユノより半年もはやくスタイリストデビューになり、ユノの最短記録をぬりかえることになる。そうなれば給料も上がるだろうが、今はまだまだ固定給のみのチャンミンの薄給を思えば飯くらいはいくらでも奢ってやってよかった。
「起きたか?時間ないからはやく飯食え」
ぼやっとしたまま、チャンミンはこくりと頷くとラグの上に座り、テーブルの上のトーストに手を伸ばした。
キッチンで自分の食器を洗ったユノは、冷蔵庫からオレンジジュースを取ってコップに注ぐと、チャンミンのテーブルに持っていってやる。
「食べ終わったら自分で洗えよ」
「ん、ユノさん、おはようございます」
「ああ、おはよ」
ワンテンポ遅れた挨拶に、ユノは思わず笑う。
まるで我が家かのようにチャンミンがリモコンでテレビをつけてニュースを見始めたのでチャンミンを横目にユノは洗面所で髪のセットをしに行った。
セットが終わり、部屋に戻るとチャンミンが食器を洗ってるところで、ユノは昨日帰ってきて床に放り投げたままの鞄を拾い、中から腕時計を取り出してつける。
「ユノさん、俺の服置く場所作ってよ」
「やだよ、ただでさえせまいのに…」
「クローゼットの服寄せていい?」
「話聞いてるか?」
チャンミンの実家は確か世田谷の方だと聞いている。すぐそこに実家がある奴とルームシェアみたいなことをしなきゃいけない意味がわからない。呆れたように取り合わないユノを気にせず、洗い物を終えたチャンミンはユノの部屋に行き勝手に服を見ている。
とはいえ、やたらと押しが強いチャンミンに、ユノはなすがままだった。舐められていると感じたならもっと厳しく接していたのだろうけれど、どういうわけかしょうがないなという気持ちになってしまってなんだかんだ許してしまう。
弟がいたらこんな感じなのかな、なんて。
一見クールなチャンミンがユノにだけやたらとなついているのは周知の事実で、兄貴のように頼られてしまうと弱い。
「これ借りていい?」
「いいよ」
寝室から出てきたチャンミンをちらっと見てユノは悩まずに返事する。
実際はここ最近、頻繁に泊まりに来るチャンミンの服は何着かユノの家のクローゼットに収まっている。
下着だけはコンビニで買ってきたりするが、服は基本的に風呂に入るときユノの洗濯物と一緒に放って、出勤のときにはユノの服を着ていくのだから洗濯がすんだチャンミンの服はひとまずクローゼットに分けて置かれている。
最初の頃は店に持っていって渡してやった時期もあったのだが、こんなに高頻度だと面倒ですっかり置きっぱなしだ。
そんな置いたままだったチャンミンのシンプルなTシャツの上にユノの薄手のダンガリーシャツを着て、白いパンツはくるぶしが見える位置でロールアップしている。
「もう出るぞ。髪は店でやれよ」
「ふぁ~ぁあーい。 髪、ユノさんしてくださいよ」
「自分でやれって」
大きなあくびで返事をしながらもチャンミンはユノの言うことに逆らわず、短く切った髪をわしゃわしゃかきながらついてくる。玄関横にはチャンミンの鞄が置かれてて、そのまま掴んで靴をはくと、二人はそろって家を出た。
店から歩いていける距離のマンションを選んだせいで、部屋の面積はせまいのに家賃はそこそこ高い。だけど、ただでさえ店にいる時間が長い分、はやく家に帰りたいし、電車の時間を気にする生活はしたくないユノは満足している。
きっとチャンミンもそうなのだろう。「ユノさんちってなんか落ち着きますね、めっちゃ好きっす」とか人のベットで転がりながら言うくらいだし。
一人の時間よりも、人といることが好きなユノにとって、チャンミンの存在はさほど害ではない。
ユノに一番なついているのはそうなのだが、それでも一年も経つと人見知り気味だったチャンミンも店の先輩スタッフとも打ち解けてきて、合コンや飲み会やらに連れ出されて忙しそうにしている。
真面目な風貌からは想像もつかなかったが、専門時代から酒を覚えていたらしくかなり酒は飲むし、男同士でつるんで遊ぶことが多かったようで、飲む打つ買うタイプのようだ。見た目はうぶなようにも見えるチャンミンの意外な一面に驚きはしたものの、美容師は総じてチャラい輩が多いので、ギャップだなぁと思う程度でネガティブな感情はなかった。
普通なら一緒に飲んでいる誰かの家に泊まったりすることになるだろうに、なぜかチャンミンはユノの家に帰ってきた。もともと彼女が泊まったときの為に一緒に家具を見てセミダブルにしていたので、ギリギリチャンミンが横に寝ていても許容できたが、これがもしシングルだったら、おそらくユノはここまでチャンミンを泊めることはできなかったと思う。
チャンミンの存在は思った以上に近くて、まさか自分が東京に来て一番つるむようになる相手が弟分なのは、ユノ自身今でも意外に思う。
昔から年下に対して面倒見はいい方だと思うが、ユノはどちらかというと年上の自分が尊敬できる先輩と遊ぶことが多かった。
同学年でもリーダー格のユノは年下からもほとんど尊敬の対象にされていて、同学年でも年下でも、ユノがいれば大体リードする立場に置かれていた。それが嫌なわけではないがそういうのを抜き甘えてもいい年上の存在はユノにとって気楽で居心地がよかったのだ。
先輩たちも、一見どこか生意気そうなユノがニコニコと好意的に話しかけてくるのは自尊心がくすぐられて満更でもない気分なようで、後輩から恐れられている地元で有名な不良の先輩たちですらユノにはすぐ懐を開いた。
そんな十代をすごしていたのに、今は二歳も年下のチャンミンとこの一年長い時間をすごして、それが自然に感じている。
教育係になったことも大きいのだろう。本当はトップスタイリストになったら、新人教育ではなくなく、マネジメントの方でやることが増えるため、個人ではなく全体を見る役割に変わる。だから本来なら春でチャンミンの教育係は卒業なのだが、夏に控えた技術試験でチャンミンがスタイリストデビューできそうだったので、店長に頼んでそれまでユノが面倒を見ることにしたのだ。
だからこうして早起きして、朝練を二人でするのももうあとちょっとなんだと思うと、これからの二人の関係は変わっていくのかもしれないなと思う。

チャンミン(21才)
美容師 二年目
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シムさんの成長具合を書いていければいいのですが、書きながら次の展開決める手法なのでどうまとまるのか実は自分でもわかっていなかったり。
たった2センチの身長差だと、服シェアできていいですよね!!
実際の二人もシェアしてますし…フフフ(´ω`)
ユノさん、ますます腰が細くなって…新曲の写真の色気が…